シンポジウム『活動する物質』(Matter(s) in motion)では、芸術、哲学、化学、生命科学、宇宙生物学といった様々な分野の専門家が集まり、物質の能動的なふるまいについて議論するとともに、生命と非生命の中間状態、自己組織化、物質の行為性と主体性(agency)、そして、地球外で能動性を持つ物質や生命を発見できる可能性について思索します。
化学、合成生物学、宇宙生物学、物質科学、ナノテクノロジーといった分野における新たな科学技術の進歩によって、まるで生命のような特性を備えた、柔らかく、能動的で、インテリジェントなシステムが生み出され、これまでの観念を覆すような、新たな視点が拓かれつつあります。このシステムには、例えば、動き、成長、自己分裂、自己複製、生殖、適応、原始的な代謝といった特徴があり、現在進められているマイクロスイマー、遺伝的ネットワーク、ナノマシン、ウェットなロボット(wetbots)、プロトセルのような、細胞の化学モデルの設計・開発によって、この分野の進歩と最新技術を垣間見ることができます。一方、現代のアーティストは、創作活動に物質の原理を応用したり、自己集合、分子間相互作用、物理化学的プロセスなどに基づく設計方法を取り入れたりすることによって、自律的で柔らかなシステムに関する創作活動を開始しています。これらの芸術作品は、生命と非生命の境はどこにあるのかを、私達に考えさせます。
自己の構築とは、また成長、誕生とはどういうことなのかについて、改めて思いを巡らせながら、もし他の惑星に生命があるとしたら、それは一体どのような姿をしているだろうか、と考える機会になるでしょう。ここで問題としているのは、こうした柔らかな人工物やシステムが、生物であるのか否かではありません。むしろ、多少なりとも「生きて」いるのか、また、何ゆえ生きている(あるいはそうではない)と言えるのか、という点です。
シンポジウムでは、物質の自己組織能力、形態形成的性質、能動的なふるまいについて議論するとともに、現代のアーティストの作品において、プロセスや機能がどのように出現しているのかについても検討します。シンポジウムでは、生命と非生命の間の中間状態、物質の行為者性、地球外生命の生化学というテーマのもと、3つのテーマによる発表とパネルディスカッションを行います。
※シンポジウムの参加は無料です。一般の方も参加していただけますが、席に限りがあるため、事前登録が必要です。シンポジウムは日本語・英語同時通訳で行われます。
企画:Juan M. Castro and Akihiro Kubota
主催:情報科学芸術大学院大学[IAMAS]、多摩美術大学
協力:多摩美術大学メディア芸術コース、東京大学大学院総合文化研究科、IAMAS 産業文化研究センター
[ 2019.6.7 Fri. ]
09:30
受付開始
09:50
開会挨拶
10:00
「テクノサイエンスの時代における芸術:
生命の限界を推測する」
「テクノサイエンスの時代における芸術:生命の限界を推測する」
Ingeborg Reichle(ウィーン応用美術大学教授)
Ingeborg Reichle
(ウィーン応用美術大学教授)
10:40
「宇宙における地球生命探査と生命の起源」
山岸明彦(東京薬科大学教授)
11:20
「現代におけるウェットウェアと芸術、エージェンシー、
およびアニメーション」
Jens Hauser(コペンハーゲン大学研究員)
12:00
昼食
13:00
午後の挨拶
13:05
「水中で運動する柔らかい微小構造体」
豊田 太郎(東京大学准教授)
13:45
「太陽系における生命生存可能環境の構築」
「太陽系における生命生存可能環境の構築」
関根 康人(東京工業大学 地球生命研究所教授)
関根 康人
(東京工業大学 地球生命研究所教授)
14:25
「(プロト)エイリアンをつくる」
久保田 晃弘(多摩美術大学教授)
14:40
「地球外物質の自己集合化能力、行為性と主体性を探る」
「地球外物質の自己集合化能力、
行為性と主体性を探る」
Juan M. Castro(情報科学芸術大学院大学准教授)
Juan M. Castro
(情報科学芸術大学院大学准教授)
15:00
休憩(コーヒーブレイク)
15:20
「アートと自己組織物質、物質の行為者性、
プロト・エイリアンについて考える」
「アートと自己組織物質、物質の行為者性、プロト・エイリアンについて考える」
パネリスト
16:20
Q & A
16:50
閉会行事
17:00
終了